3.自宅療養,抗がん剤治療(2014年12月30日~2015年2月17日)
 

 昨年の緊急手術で何とか命をとりとめました。そこで,正月は自宅で過ごせたのですが,家内の体調は益々悪くなります。抗がん剤治療の1クールが終わった時点で,肝臓が悪くなり炎症反応が出てきたので再入院です。また,不安感から家内の精神状態も悪くなり,怒りっぽくなりました。
吾が妻に知られてならぬ残余命 優しさ増しき己に気付き 12月31日
病巣の進行止める祈り込め”時間よ止まれ”お願いだから 12月31日
正月や冥土の旅の1里塚これより先は行き止まりなり 1月1日
初詣”妻に奇跡が起こるよう”神頼みしか吾には出来ず 1月1日
元旦に次の正月考まじ 今年限りのお節と食す 1月1日
少しだけ体力戻り家事をして笑いも見せる「妻よ逝くなよ」 1月3日
我妻との残り時間共有しガンに負すなと心ではげます 1月5日
我妻の体調悪しと思いきに吾を気遣い元気な口調 1月5日
友人に病状はなす我妻の後ろ姿に辛さ隠せず 1月5日
珍しく外食乞うるわが妻の 胸中思い”かごの屋”に行く
 私は腎不全でありあまり外食をしないのですが,”かごの屋は”自宅から一番近い和食店であり,妻と時々言っていた店なのです。
1月6日
いろいろな検診治療にいくと言う己が余命を知らざればこそ
 秋の検診は不可能なのを,この時の妻は知りません。
1月6日
連日の妻の外出危惧をする わが胸中を君は知りしか
 益々,余命が短くなるのではと心配ですが,余命については妻に絶対言えません。
1月8日
「元気な間今まで通り家事をする」言いし我妻不治を知りしか
 自分の余命を知らない妻の,奥の深い発言でした。
1月9日
病から食細くなり痩せた妻居間のソファーで小さくなりき 1月9日
妻病みて急に進んだ健忘症 頭の中は妻のみ思いて 1月11日
吾が妻と残されし時間(とき)判らねど一緒に居るを幸(さち)と感じて 1月13日
英会話脱会すると妻が言う スポーツジムは会員のまま 1月14日
妻よりの「桜咲いたら」のはなし聞く 君は待てるか桜の開花を 1月19日
君のため何でもすると思えども妻の病は強敵過ぎる 1月20日
音が無い妻の入浴伺いて 影の動きに安堵する吾 1月22日
「何食べる」聞けど家内は食べられず「何も要らん」と応えが返る 1月23日
詩吟して新年会に出席し買い物したる妻に時間を 1月24日
”しんどい”と寝ている吾に「大事な体なんやから」と言う妻 1月25日
家内との最後の外食(しょくじ)食細くルビー婚式祝い感じず 1月26日
これからの残されし時間(とき)知らないで話する妻騙すは辛し 1月26日
先が無い妻の願いはすべて聞く 動ける時間長くあるまじ 1月29日
不安から怒り激しくなる妻の 癌の病は心も病ます 1月30日
2月9日11日
参加費が勿体ないとフラダンス 見に行きし妻いたましくなり 1月31日
饒舌な妻の姿は久しぶり 食べざれしのみ残念と言い 2月1日
日に日にと吾が体重も減りにしは 己が精神弱いからなり 2月1日
出てこない妻の様子を確認に「大丈夫か」と声掛ける部屋 2月2日
妻からの買い物頼まれうきうきす やがて頼まれなくなるからに 2月2日
わが妻が病に耐えて作りたる恵方巻には最期の愛が 2月3日
頻繁に外出をするわが妻は己が命の短さ知るか 2月4日
治らない病に耐える我妻を怒鳴りし吾は鬼ぞ悪魔ぞ
 私は,気の小さな弱い性格です。先が短い妻に怒鳴るとは人間失格です。
2月4日
病みてから夫婦の絆さらに増す それを引き裂く運命憎し 2月5日
心配と不安と憐憫いりまじり吾が精神は崩壊寸前 2月6日
頼むから外出止めてと乞う吾の心知りしか妻は詩吟に
 詩吟が妻の不安のはけ口だったのでしょう。でも,私は自宅にいて欲しかった。
2月7日
湯上りのパジャマ姿の吾を見て「寒そうやね」と妻が言いたり
 こころには,弱い私は精神的な不安からかなり痩せて来て,品疎な体になったので妻がこのように言ったのです。
2月8日
家内との最後の旅は相生のすがる思いの重粒子線 2月9日
がん治療妻には無理だ転移して癌細胞に技術降伏 2月9日
高額の医療費なんぞ気にしない 妻の命が最優先ぞ 2月9日
最後にと妻と座ったグリーン席 「広い」と言うが心は沈み
 もう妻と新幹線に乗ることは無いだろうと,グリーン車に乗りました。
2月9日
精神の糸が切れにし奴だこ あらゆることに疑心暗鬼に 2月10日
明日しか考えないと吾はいう 明後日以降は不安でならず 2月11日
日に日にと妻の体調悪くなり吾が不安感さらに掻き立て 2月14日
われ一人になりせば絶対食できじ 鉄火丼には妻の愛あり 2月15日
これまでの亭主関白反省し妻病みし後は嬶天下に 2月16日
医師よりの再入院の指示を受け「入院はいや」と言う妻憐れ 2月17日

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